
グリム童話より
むかしむかし、あるところに、小さなかわいい女の子がおりました。
誰が見ても思わず微笑んでしまうような子でしたが、中でもいちばんこの子を可愛がっていたのは、おばあさんでした。
ある時、おばあさんが赤いビロードでずきんを縫ってやりました。それがあまりによく似合うので、この子はいつしか「赤ずきん」と呼ばれるようになりました。
ある日、おかあさんが言いました。
「赤ずきん、おばあさんが病気で弱っているの。このお菓子とぶどう酒を届けてちょうだい。」
「森の中では横道にそれてはいけませんよ。転んでびんを割ってしまったら大変だからね。おばあさんのお部屋に入ったら、おはようございます、を忘れずにね。」
赤ずきんは「大丈夫よ」と言って、おかあさんと指きりをしました。

おばあさんの家は、村から半道ほど離れた森の中にありました。
赤ずきんがかごを持って歩き出すと、木々のあいだからやわらかな光がこぼれ、鳥たちが静かにさえずっていました。

森に分け入ると、おおかみがひょっこり現れました。赤ずきんは、おおかみがどんな恐ろしいけものか知りませんでした。
「やあ、赤ずきん。こんなに早くからどこへ行くんだい。」
「おばあさんのところよ。病気なの。」
「おばあさんの家はどこだい。」
「ずっと森の奥、大きな樫の木が三本立っている下よ。」
おおかみは腹の中で考えました。
——若い柔らかそうな小娘。こいつと婆さんと、両方いただくとしよう。
しばらく赤ずきんと並んで歩きながら、おおかみはこう話しかけました。
「赤ずきん、まわりを見てごらん。こんなにきれいな花が咲いているのに気づいていないのかい。小鳥の歌声も聞こえるだろう。森はこんなに明るくて楽しいのに、きみはまっすぐ前ばかり向いて歩いているね。」
言われて赤ずきんが目を上げると、木々のあいだから日差しがもれて、あちこちで踊るように揺れていました。どの木のそばにも、きれいな花がいっぱいです。
——おばあさんに花束をこしらえて持っていったら、きっとお喜びになるわ。まだ朝早いから大丈夫。
そう思って赤ずきんは横道にそれ、花を一つ摘むたびに、もっと先へ、もっと奥へと誘われて、いつしか森の深いところへ入り込んでいきました。
そのあいだに、おおかみはまっすぐおばあさんの家へ走りました。
とんとん。
「おや、どなた。」「赤ずきんよ。お菓子とぶどう酒を持ってきたの。」「取っ手をお押し。起きられないのだよ。」
おおかみは戸を開けるなり、何も言わずにおばあさんのところへ行き、ひと口に飲みこんでしまいました。それからおばあさんの着物を着てずきんをかぶり、寝床に横になって、カーテンを引きました。
花を持ちきれないほど集めたころ、赤ずきんはようやくおばあさんのことを思い出しました。
家に着くと、戸が開けっぱなしになっています。中に入ると、何かがいつもと違う気がしました。
——どうしたのかしら。おばあさんの家に来ると、いつもは楽しいのに。今日はなんだか胸がざわざわする。
「おはようございます。」
呼んでみましたが、返事はありません。

寝床のカーテンを開けると、おばあさんがずきんを目深にかぶって横になっていました。
「おばあさん、なんて大きなお耳。」「おまえの声がよく聞こえるようにだよ。」
「おばあさん、なんて大きなお目め。」「おまえがよく見えるようにだよ。」
「おばあさん、なんて大きなお手て。」「おまえがよくつかめるようにだよ。」
「でも、おばあさん——なんて大きなお口。」
「おまえを食べるためだよ。」
言い終わるか終わらないうちに、おおかみは寝床から飛び出し、赤ずきんをひと飲みにしてしまいました。
たっぷり腹を満たしたおおかみは、また寝床にもぐりこみ、やがてものすごいいびきをかき始めました。

ちょうどそのとき、猟師がおばあさんの家の前を通りかかりました。
——こんな大きないびきは、おかしい。何かあったのではないか。
中に入ると、寝床にはおおかみが横たわっていました。
猟師は鉄砲を構えかけましたが、ふと思いとどまりました。
——もしかしたら、おばあさんはまだ腹の中で生きているかもしれない。
そこで鉄砲の代わりにはさみを手に取り、眠っているおおかみの腹を切り開きました。
ふたはさみで、赤いずきんがちらりと見えました。もうふたはさみで、赤ずきんが飛び出してきました。
「ああ、怖かった。中はまっくらだったの。」
続いて、おばあさんもまだ息のあるまま出てきました。
赤ずきんは大きな石をいくつも運んできて、おおかみの腹につめこみました。やがて目を覚ましたおおかみは飛び出そうとしましたが、石の重みでたちまちへたばり、そのまま動かなくなりました。
三人は手を取り合って喜びました。
猟師はおおかみの毛皮を持ち帰り、おばあさんはお菓子を食べ、ぶどう酒を飲んで、すっかり元気を取り戻しました。
赤ずきんは静かに思いました。
——もう二度と、ひとりで森の横道に入るのはやめよう。おかあさんが、いけないとおっしゃったのだから。
おしまい
——物語の奥にあるもの
ペローが一六九七年にこの話を書いたとき、結末に救いはありませんでした。おおかみは少女を食べ、そこで物語は終わります。猟師は登場しません。ペローの読者は王宮サロンの貴婦人たち——彼が描いた「おおかみ」とは森の獣ではなく、物静かで愛想がよく、若い娘たちを街路から家の中まで追いかけてくる紳士のことだと、彼自身が末尾の教訓で明かしています。赤いずきんとは、当時のフランスで良家の婦人が被る頭衣シャプロンのこと。子どもにそれを与えるとは、大人の世界への早すぎる招待を意味していました。
グリム兄弟が猟師による救出を加えたのは、教育的な意図からです。失敗しても助かる——学びの機会がある。けれどペロー以前の口承版には、さらに驚くべき展開が残されています。少女はおおかみに騙されて祖母の肉を食べさせられますが、機転を利かせて「外へ出たい」と嘘をつき、自力で逃げ出すのです。男の救済者はどこにもいません。物語は語り直されるたびに、少女から能動性を奪い、最後に他者の手で取り戻す——その変遷こそが、各時代が「女性に何を許したか」の記録です。
作家アンジェラ・カーターは一九七九年の翻案で、赤ずきんにおおかみを恐れさせるのではなく、笑わせました。衣服を暖炉に投げ入れ、おおかみとともに眠りにつく。恐怖に怯える犠牲者という筋書きこそが本当の罠であり、自分の欲望を認めることが脱出路だ、と。三百年のあいだ、この物語は少女に「森へ行くな」と警告し続けてきました。けれど本当に問われているのは、森を危険にしているのは誰か、ということです。