
アンデルセン童話より
大晦日の夜でした。
雪が降り積もる街を、ひとりの少女が歩いていました。頭には何もかぶらず、足には何も履いていません。
家を出たときには母の古い上履きを引きずっていたのですが、通りを渡ろうとしたとき、馬車が恐ろしい勢いで走ってきて、慌てて飛びのいた拍子に片方をなくしてしまいました。
もう片方は、通りすがりの男の子がさっと拾い上げ、笑いながら走り去りました。
「こいつは大きい。今度赤ん坊ができたら、ゆりかごにちょうどいいや」
そうして少女は裸足になりました。小さな足は寒さで赤くなり、やがて青紫色に変わっていきました。
古いエプロンの中にマッチの束を抱え、手にも一握りを持っていましたが、この日は朝から一本も売れていませんでした。
誰も立ち止まってはくれません。誰も少女の方を見ようとしません。
窓という窓から暖かい光がもれ、どの通りにも鵞鳥を焼く匂いが漂っていました。今夜は大晦日なのです。
二つの家のあいだの隅に、少女はうずくまりました。小さな足を体の下に引き寄せても、寒さは止まりません。
家に帰ることはできませんでした。一本もマッチを売れなかったのです。一銭も持って帰らなければ、父に叩かれるに決まっています。
それに、家だって寒いのです。屋根には隙間があいて、藁をつめても風が吹き込んできます。

悴んだ指はもう感覚がありませんでした。
——マッチを一本だけ、一本だけ擦って温まろうか。
ためらいながら一本を抜き取り、壁にこすりつけました。シュッ。小さな炎が灯りました。
明るく温かい光の中に、真鍮の取っ手がついた大きな鉄のストーブが見えました。なんと気持ちのよい温かさでしょう。少女は足を伸ばそうとしました——けれど、炎が消えました。
ストーブは消え、手の中には燃えさしのマッチが一本残っているだけでした。
もう一本、擦りました。
光が壁を透かして、向こうの部屋が見えました。白いテーブルクロスの上には陶器の皿が並び、鵞鳥の丸焼きが湯気を立てています。すると——がちょうが皿から飛び降り、ナイフとフォークを背中に刺したまま、よちよちと少女の方へ歩いてきました。
マッチが消えました。目の前には冷たい壁があるだけです。
三本目を擦りました。
今度はクリスマスツリーの下に座っていました。何千という蝋燭が緑の枝の上で燃え、色とりどりの絵が少女を見下ろしています。少女が両手を伸ばすと——炎は消えました。
クリスマスの蝋燭の光は高く高く昇って、やがて空の星になりました。そのうちの一つが長い尾を引いて落ちていきます。
「誰かが死んだのね」
少女はつぶやきました。星が落ちるとき、魂が神さまのもとへ昇るのだと、まだ生きていたころのおばあさんが教えてくれたのです。
おばあさん。この世でただひとり、少女にやさしかった人。
少女はもう一本、マッチを擦りました。
あたりがぱっと明るくなり、その光の中に、おばあさんが立っていました。生前と変わらぬ、澄んだやさしい姿で。
「おばあさん!」
少女は叫びました。
「お願い、連れていって。マッチが消えたら、おばあさんも消えてしまう。ストーブも、がちょうも、クリスマスツリーも——みんな消えてしまったの」

おばあさんが消えてしまわないように、少女は残りのマッチを全部、一度に壁にこすりつけました。
マッチは昼間のように明るく燃え上がりました。
おばあさんの姿がこれまでにないほど大きく、美しく輝きました。おばあさんは少女を抱き上げ、ふたりは光に包まれて高く、高く昇っていきました。
寒さも、飢えも、怖れも——もう何もありませんでした。

新しい年の朝。
家々の隅に、少女が座っていました。頬は赤く、口もとには微笑みを浮かべて——凍え死んでいました。
大晦日の夜に凍え死んだのだと、人々は言いました。燃えさしのマッチの束を見て、温まろうとしたのだろうと言いました。
けれど、少女が何を見たのか、どんな輝きの中でおばあさんとともに新しい年の喜びへ昇っていったのか——それを知る者は誰もいませんでした。
おしまい
——物語の奥にあるもの
アンデルセンの母親は、幼い頃に物乞いに出され、凍えるくらいなら帰らないと橋の下に隠れたことがあったといいます。一八四五年にこの物語を書いたとき、すでに名声を得ていた彼は、自分の出自の記憶を少女の姿に閉じ込めました。この物語には悪役がいません。おおかみも魔女も継母もいない。少女を殺したのは、寒さという自然現象と、見て見ぬふりをする街という社会構造です。
マッチの炎が見せた四つの幻影は、人間の根源的な必要を順に辿ります。暖かいストーブ——生存。ごちそうの鵞鳥——栄養。輝くクリスマスツリー——帰属。そしておばあさん——無条件の愛。少女が求めたのは贅沢ではなく、子どもなら誰でも持っているはずのものでした。一本のマッチを擦るたびに商品が灰になる——彼女は文字通り、自分の生業を燃やして一瞬の温もりを買っていたのです。想像力と資本の論理は、ここで正面から衝突します。
翌朝、少女の亡骸を見つけた人々はこう言います。「暖まろうとしたのだね」——これが物語で最も残酷な一文です。少女の死を、まるで本人の選択であるかのように説明し、自分たちの無関心を免責する。ディケンズは同じ時代に『クリスマス・キャロル』でスクルージを改心させました。一人の心が変われば世界は変わる、と。けれどアンデルセンは、誰の心も変えません。少女は静かに死に、街は何事もなく新年を迎える。その沈黙こそが、百八十年経っても消えないこの物語の告発です。